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日本という国は、ただ一つの王朝が千代にわたり続く、世界でも稀なる歴史を持つ国である。その中心には常に天皇があり、人々はその存在を敬いながら、共に時代を築いてきた。
かつて天武天皇と持統天皇は、乱世ののちに新たな秩序を定め、国家の礎を築いた。後醍醐天皇は、混迷の世にあっても天皇親政の理想を掲げ、日本のあるべき姿を求め続けた。そして彼らの精神は、今もなお、日本書紀の言葉の中に脈々と息づいている。
日本書紀は単なる古代の記録ではない。 それは国家の歩みを整理し、対外的な視点も交えながら、日本のかたちを描き出した「国の物語」である。そこには、天皇を中心に結びつく社会の理想と、秩序ある統治の智慧が示されている。歴史を学ぶとは、単に過去を知ることではなく、そこに流れる精神を受け継ぎ、未来へと活かすことに他ならない。
現代では、民主主義や自由という価値観が重んじられる。しかし、それらは混沌とした力を持つ側面もあり、ただ放任すれば、社会の基盤を揺るがしかねない。だからこそ、日本の歴史が育んできた「修理固成」の精神が求められる。すなわち、自由を無秩序に広げるのではなく、国家の秩序の中で生かし、民を本とする政治を実現することこそ、真の安定と繁栄につながるのではないだろうか。
我々は、天皇という永続する存在のもとで、歴史と伝統を守りながら、新しい時代を創り上げることができる。過去を知ることは、未来への道を照らすことに他ならない。今こそ、悠久の日本の歩みを振り返り、その中にある智慧を見つめ直す時ではないか。