日本人の金融リテラシーと資産一元管理が、外資売却の無意味化をもたらす
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現在、日本ではJA(農協)や地方銀行の再編・解体が進み、これに伴う資産の「外資への売り飛ばし」がしばしば問題視されている。しかし、この現象の本質は、政府による単なる構造改革の問題ではなく、むしろ日本国民の金融リテラシーの低さにこそ根本的な原因がある。
多くの国民が「銀行に預けていれば安全」「農協に任せていれば安心」といった受け身の態度を取り続けた結果、金融資産の運用や保全に対する主体的な意識が育たず、国内金融が閉鎖的かつ非効率なまま維持されてきた。そしてその脆弱性が、現在の再編・解体、さらには外資の参入を招いている。
しかしながら、これらの問題はむしろ国民一人ひとりが金融資産を一元管理し、能動的に運用・監視できる体制を整えることで無効化することができる。
たとえば、マイナポータルとPayPay、そして各種金融機関との口座連携を活用すれば、自分の金融資産をリアルタイムで把握・制御することが可能になる。これにより、たとえJAやゆうちょ銀行が解体され、その資産が外資に渡ったとしても、日本人個人が自らの資産を適切に動かせるのであれば、「外資に売り飛ばされた」という問題は実質的に意味を失う。金融資産の流動性と透明性が確保されれば、所有の名義に関係なく、実質的な支配権は国民の手中に残るのである。
さらにこの考え方は、不動産、特に土地・建物の管理にも応用可能である。マイナンバー制度を用いて、個人の所有地や建物情報を国が一元的に把握・管理する体制を構築すれば、土地の無秩序な売却や不明化を防ぐことができる。
その上で、外国人・外国法人による土地取得や不動産買収については、法整備によって制限・監視を強化することが不可欠である。すでに一部の先進国では国家安全保障や食料安全保障の観点から、戦略的土地や農地への外国資本の介入を厳格に制限しており、日本も同様の措置を講じる必要がある。
つまり、資産が外資に「売られる」ことを問題視する以前に、まず我々国民自身が資産を把握し、自らの意思で動かせる状態にあるかどうかが問われている。そして国家もまた、個人の資産や土地の情報を透明かつ一元的に把握できる制度設計と、外国資本の介入を適切にコントロールする法制度によって、「形式的な所有」ではなく「実質的な統治と主権」を維持する必要がある。
国と国民が一体となって情報と資産の一元管理体制を構築すれば、JAの解体や一部の金融機関・不動産の売却といった個別の出来事は、もはや国家の主権や国民の生活を脅かすものではなくなるのである。